このページの要点
- 当事者は名称・所在・代表者まで特定し、登記事項証明書の記載と一致させる(商業登記法10条)。屋号だけでは主体が特定できない。
- 代表取締役は会社の業務に関する一切の行為をする権限を持つ(会社法349条4項)。署名欄は法人名・肩書・氏名を並べる。
- 代理人が署名するときは本人の名で結ぶ形にし、委任状を保管する。権限のない人の契約は本人の追認がなければ効力を生じない(民法113条1項)。
- 相手が変わる場面は、契約上の地位の移転(民法539条の2)、免責的債務引受(472条)、債権の譲渡(466条)を使い分ける。
結論:覚書の効力は「誰と誰の合意か」で決まる。当事者・署名者・権限の三つを別々に確かめる
覚書や合意書の内容がどれほど丁寧に書かれていても、それを結んだ人が誰なのか、その人に結ぶ権限があったのかが曖昧だと、書面全体の足場が揺らぎます。当事者の書き方で迷う場面は、実務では少なくありません。法人名だけが書かれて署名者の肩書がない、代表者の個人名だけが書かれていて法人の名前がない、担当者の名前で署名されている、三者目が途中から入ってきた、といった具合です。
整理のために、当事者、署名者、権限の三つを分けて考えます。当事者とは、その合意の効果が帰属する主体で、権利を持ち、義務を負う人または法人です。署名者とは、実際に書面に署名または記名押印をする人です。権限とは、署名者が当事者のために合意を結ぶことができる資格や委任の範囲です。法人が当事者のとき、署名者は人間であり、当事者と署名者は別になります。そのため、署名欄には、「どの法人のために」「どの肩書の人が」署名したのかが読み取れる書き方が必要です。
このページは、条文と一般的な契約実務にもとづく整理であり、特定の取引や会社への当てはめではありません。覚書を結ぶ場面で当事者の確認が必要になる局面を、順に整理します。署名・押印の方式そのものは署名・押印・部数・保管で、日付の書き方は作成日・締結日・効力発生日の書き分けで扱います。ここでは当事者の特定と署名者の権限に絞ります。結論を先に並べます。
- 当事者は、名称だけでなく、所在と代表者まで特定する。同じ名称の法人や、屋号と個人の関係が紛らわしい場合に備える。
- 法人の署名は、「法人名」「肩書」「氏名」の三点を並べる。代表者が署名するなら、代表者の肩書と氏名を書く。
- 代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を持つ(会社法349条4項)。権限に制限を加えても、善意の第三者には対抗できない(同条5項)。
- 担当者が署名するなら、権限があることを確かめる。委任状や社内の権限の定めなど、権限を示す資料を確認する。
- 代理人が署名するときは、本人の名で結ぶことを示す書き方にする。権限のない人が結んだ契約は、本人の追認がなければ本人に効力を生じない(民法113条1項)。
- 三者以上の覚書や、途中で相手が変わる場合は、契約上の地位の移転や債務の引受けの仕組みを使う。
署名欄を書く前に、手元で確かめる五つのこと
- 当事者の正式な名称、所在、代表者の肩書と氏名は、公的な資料(登記事項証明書など)の記載と一致しているか
- 署名する人は、代表者か、担当者か、代理人か。担当者・代理人なら、権限を示す資料があるか
- 会社の内部の手続(取締役会の決議など)が必要な取引ではないか
- 当事者が未成年者や、判断能力に制約のある人ではないか
- 三者以上が関わる場合、各当事者の義務の範囲と、他の当事者への効果が書面から読み取れるか
当事者の特定:名称・所在・代表者を、公的な資料と一致させて書く
当事者の書き方の基本は、その人または法人を一意に特定できる情報を、過不足なく書くことです。法人であれば、名称、本店の所在地、代表者の肩書と氏名。個人であれば、氏名と住所。個人事業主であれば、事業の屋号だけでなく、法的な主体である個人の氏名を書きます。屋号は法人格ではなく、屋号だけを書いた書面では、権利義務の帰属する主体が曖昧になります。
法人の名称や所在、代表者は、登記事項証明書に記載されています。何人も、手数料を納付して、登記簿に記録されている事項を証明した書面(登記事項証明書)の交付を請求することができます(商業登記法10条1項)。覚書を結ぶ際に、相手方の登記事項証明書で、名称(株式会社の表記の位置、全角・半角、旧字体の有無を含む)、本店の所在地、代表者の氏名を確かめ、書面の記載とそろえると、当事者の特定の誤りを防げます。登記の記載と書面の記載がずれていると、同じ法人を指していると言えるかの確認が必要になり、手間が増えます。
当事者の種類ごとの書き方と確かめる資料
| 当事者 | 書き方の基本 | 確かめる資料の例 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| 株式会社など営利法人 | 本店所在地、名称、代表者の肩書と氏名 | 登記事項証明書 | 支店・営業所の所在地を書いてしまい、本店と異なる。旧商号のまま書く |
| 持分会社(合同会社など) | 本店所在地、名称、代表社員または業務執行社員の肩書と氏名 | 登記事項証明書 | 法人が業務を執行する社員のとき、職務を行うべき者の記載が必要になる場合がある(会社法598条) |
| 個人 | 住所、氏名 | 本人確認の資料 | 旧姓や通称で書く。住所の表記が資料と食い違う |
| 個人事業主 | 屋号ではなく個人の氏名と住所を書く。屋号は括弧書きで添える | 本人確認の資料、事業の届出の控えなど | 屋号だけを書いて個人が特定されない。家族名義と事業の名義が混在する |
| 任意団体 | 団体名、代表者の氏名、代表者個人としての住所。団体の権利義務の主体をどう読むかを明確にする | 規約、代表者の選任を示す資料 | 団体名義と代表者個人の責任の関係が不明確なまま署名する |
表の個人事業主と任意団体の行は、書き方が定まらないまま使われやすい箇所です。屋号やチャンネル名のようなものは、取引上の呼び名として便利ですが、契約上の権利義務の主体となる法人格ではありません。屋号を書く場合も、個人の氏名を併記し、「屋号:○○(以下「甲」という)」のように、甲が個人であることが読み取れる形にします。任意団体は、団体としての財産と代表者個人の財産の関係がはっきりしないことがあり、書面の中で、団体を主体とするのか、代表者個人を主体とするのかを明確にします。
代表者の署名と担当者の署名:権限の有無を、肩書ではなく根拠で確かめる
株式会社の代表は、原則として取締役ですが、他に代表取締役その他会社を代表する者を定めた場合は、その人が代表します(会社法349条1項)。取締役会設置会社では、取締役会が取締役の中から代表取締役を選定します(会社法362条3項)。代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有し(会社法349条4項)、この権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗できません(同条5項)。持分会社でも、業務を執行する社員が持分会社を代表するのが原則で、代表する社員を定めたときはその社員が代表し、権限の制限は善意の第三者に対抗できません(会社法599条)。
つまり、代表取締役の署名がある覚書は、原則として会社を拘束します。署名欄には、会社名、「代表取締役」の肩書、氏名を並べます。実務では、署名欄に会社名と氏名だけを書き、肩書を省略した書面が見られますが、肩書の記載がないと、その人がどの資格で署名したのかが書面から読み取れません。肩書は、代表者としての署名であることを示す重要な手掛かりです。
条文例署名欄の書き方の例(一般的な例)
- (甲) 所在地 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
- 名称 株式会社○○
- 代表取締役 ○○ ○○ 印
- (乙) 住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
- 氏名 ○○ ○○ 印
法人は「所在地・名称・肩書・氏名」の四点、個人は「住所・氏名」の二点を並べる。肩書と氏名の間は空けず、同じ行に書く。
問題になるのは、代表者以外の人、つまり担当者や部長、店長、支店長などが署名する場合です。肩書が「部長」「店長」「支店長」であっても、それだけで会社を代表して契約を結ぶ権限が当然にあるとは限りません。会社法には、支配人の代理権(会社法11条)、本店または支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人の権限(会社法13条)、事業に関する特定の事項の委任を受けた使用人の権限(会社法14条)などの定めがありますが、どれも、使用人の地位や委任の範囲によって変わります。また、代表取締役以外の取締役に、社長、副社長その他会社を代表する権限があると認められる名称を付した場合には、会社は善意の第三者に対して責任を負います(会社法354条)。こうした規定は、外から見て権限があるように見える人と取引した相手方を保護する仕組みですが、それでも、保護されるかどうかは個々の事情に左右されます。
そこで、署名者が代表者でないときは、権限を示す資料を確認するのが実務の基本です。典型的には、委任状、社内の権限の定め(職務権限規程、決裁権限表など)、代表者からの権限付与の通知などです。覚書の本文や署名欄に、「署名者は、甲を代表して本覚書を締結する権限を有することを表明し、保証する」といった表明保証の条項を置く書き方もあります。表明保証は、権限がなかったときに、署名者側が責任を負うことを書面上で明確にする手段であり、権限の確認を省略してよいという意味ではありません。
確認の問いと理由担当者が署名するときの確認の問い
署名者の肩書は何か。その肩書で、この取引を結ぶ権限が認められるか
肩書の名称だけでは権限は判断できない。支配人、事業の主任者、特定事項の委任を受けた使用人など、会社法上の区分に当たるか、あるいは代表者から個別に委任を受けているかを確かめる
権限を示す資料は、書面と一緒に保管できるか
委任状や権限規程の写しを、覚書と一緒に保管しておく。後から権限が問題になったときの手掛かりになる
取引の金額・内容は、委任された範囲に収まっているか
委任の範囲を超える取引は、権限外の行為となる。範囲を超えるなら、代表者の署名に切り替える
署名欄に、権限を持つ者としての記載があるか
「代表取締役」「支配人」「代理人」など、署名者の資格を肩書として書く
権限を確かめる作業は、相手方の署名者に限らず、自分の側の署名者についても行う。
代理人が署名するとき:本人の名で結ぶ形に整え、権限がない場合の扱いを知る
代理人がその権限内で、本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接に効力を生じます(民法99条1項)。署名欄では、「本人の名称・氏名」「代理人であること」「代理人の氏名」が読み取れる形にします。たとえば、「甲 ○○株式会社 代理人 ○○ ○○」のように、本人の名の下に、代理人の肩書と氏名を並べます。代理人の名だけを書き、本人の名がどこにも出てこない書面は、誰が当事者なのか分からなくなります。
代理権を有しない人が他人の代理人として結んだ契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じません(民法113条1項)。追認またはその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗できません(同条2項)。代理人として契約を結んだ人は、自己の代理権を証明したとき、または本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行または損害賠償の責任を負います(民法117条1項)。ただし、相手方が代理権のないことを知っていたとき、または過失によって知らなかったときなどは、この責任は生じません(同条2項)。
さらに、本人が第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した場合には、その代理権の範囲内でその他人が第三者との間でした行為について、本人が責任を負うことがあります(民法109条1項)。代理人が権限外の行為をした場合でも、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、同様に責任を負います(民法110条)。こうした表見代理の規定は、取引の安全を守るためのものですが、成立するかどうかは個別の事情によって判断されます。覚書を結ぶ側としては、表見代理が成立するかもしれない、という期待に頼らず、権限を示す資料を確認しておくのが堅実です。
書き方の例(一般的な例) 代理人が署名する場合の書き方
署名欄
理由本人の名で結ぶ意思が示されず、誰が当事者か分からなくなるのを防ぐ(民法99条)
権限の資料
理由権限がなかった場合、本人の追認がなければ本人に効力が生じない(民法113条1項)
権限の範囲
理由対象が広すぎる委任状は、どの取引についての権限かが争いになりやすい
内部の決議が必要な取引と、利益相反:署名者の権限だけでは足りない場面
会社の内部の意思決定が必要な取引があります。取締役会設置会社では、重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財などの重要な業務執行の決定は、取締役に委任できず、取締役会の決議が必要です(会社法362条4項)。覚書の内容が、こうした重要な取引に当たる場合、代表者の署名だけでなく、内部の決議が適正にされているかが、取引の安定にとって重要になります。何が「重要な財産の処分」や「多額の借財」に当たるかは、その会社の規模や財産の状況、取引の内容によって判断が分かれるため、一律の基準を示すことはできません。
もう一つ、見落とされやすいのが利益相反です。取締役が自己または第三者のために会社と取引をしようとするとき、また、会社が取締役の債務を保証するなど、取締役以外の者との間で会社と取締役の利益が相反する取引をしようとするときは、取締役会設置会社でない会社では株主総会で、取締役会設置会社では取締役会で、取引について重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(会社法356条1項、365条1項)。承認を受けた取引については、民法108条の自己契約・双方代理の規制は適用されません(会社法356条2項)。
民法108条は、同一の法律行為について、相手方の代理人として、または当事者双方の代理人としてした行為を、代理権を有しない者がした行為とみなします(同条1項)。同じ人が覚書の双方の署名者になる場合や、代表者が自分個人と会社との間で覚書を結ぶ場合は、この規定との関係を確認する必要があります。署名欄に同じ人の名前が両方の当事者の側に出てくる書面は、利益相反の観点から、書面を見る第三者に注意を促します。
署名者の権限のほかに確かめる、内部の手続の確認
- 取引が、内部の決議を要する重要な取引に当たらないか(取締役会設置会社の場合)
- 署名者が、取引の相手方の役員や、相手方と特別な関係にある人ではないか
- 同じ人が双方の署名者になっていないか。なっているなら、事前の承認や許諾があるか(民法108条、会社法356条)
- 内部の決議が必要なら、決議の議事録の写しを保管できるか
制限行為能力者が当事者のとき:同意が必要な行為と、取り消される場合
当事者が個人の場合、その人の判断能力や年齢によって、単独で有効に結べる範囲が異なります。未成年者が法律行為をするには、原則としてその法定代理人の同意が必要で、同意を得ずにした法律行為は取り消すことができます(民法5条1項・2項)。ただし、単に権利を得、または義務を免れる法律行為は、この限りではありません(同条1項ただし書)。成年被後見人の法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き、取り消すことができます(民法9条)。被保佐人が、借財や保証、不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為、和解など、一定の行為をするには保佐人の同意が必要で、同意を得ないでした行為は取り消すことができます(民法13条1項・4項)。被補助人についても、審判で定められた特定の法律行為について、補助人の同意を要し、同意を得ないでした行為は取り消すことができます(民法17条1項・4項)。
覚書の内容が、義務を負う性質のもの(支払の約束、権利の放棄、債務の免除など)であれば、当事者が未成年者や、判断能力に制約のある人のとき、単独で結んだ書面が後から取り消される可能性があります。署名欄の段階で、生年月日や後見などの状況まで確認するのは現実的でない場面もありますが、相手方が学生、高齢者、判断能力に不安のある人である場合は、法定代理人や保佐人などの同意を得た形で結ぶ、あるいは同意書を併せて受け取る、といった配慮が必要になります。取消しの効果や期間は、署名した覚書の撤回と取消しで整理しています。
三者以上の覚書と、契約上の地位の移転:途中で相手が変わるとき
覚書の当事者が三者以上になる場面があります。たとえば、既存の契約の当事者に、新たな第三者が加わる、複数の取引先をまとめて一つの条件に統一する、といったときです。三者以上の覚書では、二者間の覚書にはない整理が必要になります。各当事者が、誰に対して、どの義務を負うのか。一方の当事者の義務の不履行が、他の当事者にどのような影響を及ぼすのか。書面には、これらを当事者の組合せごとに書き分けます。「甲、乙及び丙は、相互に」と一括りに書くと、実際には甲と乙の間の義務なのか、甲と丙の間の義務なのかが読み取れません。
契約の相手が途中で変わる場合の仕組みは、大きく三つに分かれます。一つめは契約上の地位の移転です。契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合に、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位はその第三者に移転します(民法539条の2)。相手方の承諾が要件であることが特徴です。二つめは免責的債務引受で、引受人が債務者と同一の内容の債務を負担し、債務者はその債務を免れます(民法472条1項)。債権者と引受人となる者との契約によってすることができ、この場合は債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に効力を生じます(同条2項)。三つめは債権の譲渡で、債権は原則として譲り渡すことができますが、譲渡制限の意思表示がされている場合には、扱いが変わります(民法466条)。
相手が変わる三つの仕組みの比較
| 仕組み | 何が移るか | 誰の同意・承諾が要るか | 覚書で書くこと |
|---|---|---|---|
| 契約上の地位の移転(民法539条の2) | 契約の当事者としての地位全体(権利も義務も) | 契約の相手方の承諾 | 移転の日、移転の対象となる契約、移転前に生じた債権債務の扱い |
| 免責的債務引受(民法472条) | 債務者の債務(引受人が負担し、元の債務者は免れる) | 債権者と引受人の契約+通知、または債務者と引受人の契約+債権者の承諾 | 引き受ける債務の特定、元の債務者が免れること、担保の扱い |
| 債権の譲渡(民法466条) | 債権者としての権利のみ | 原則不要(譲渡制限の意思表示がある場合は別) | 譲渡する債権の特定、対抗要件の具備(確定日付のある通知など) |
相手が途中で変わるときの進め方
「契約書の相手方の名前を差し替える」だけの覚書は、移転前の債権債務の扱いが書かれず、後から食い違いやすい。
基本契約と個別の契約が連なっている場合は、どの契約の地位を移すのかも特定します。複数の書面の関係と序列は基本契約・個別契約・覚書の優先関係で扱っています。また、契約を終えて新しい相手と結び直す方法を選ぶなら、合意解除の覚書で旧契約の精算を整えます。
起きがちなこと:当事者と署名者をめぐるつまずき
当事者・署名者に関して起きがちなこと
- 署名欄に法人名がなく、署名者の個人名だけが書かれている。法人のための署名か、個人としての署名かが読み取れない
- 代表者の肩書が書かれておらず、署名した人がどの資格で署名したのか分からない
- 担当者や店長が、権限の確認なしに署名した。後から、会社が「その人には権限がなかった」と言い出す
- 屋号だけが書かれ、個人の氏名が書かれていない。権利義務の帰属する主体が特定できない
- 登記上の名称・所在と書面の記載がずれている。旧商号や旧所在地のまま書かれている
- 内部の決議が必要な取引なのに、代表者の署名だけで進められ、後から内部の手続の不備が問題になる
- 三者以上の覚書で、誰が誰に対してどの義務を負うのか書かれず、一方の不履行が他方にどう影響するのかが分からない
- 相手の名前を差し替えるだけの覚書で、移転前に生じた債権債務の扱いが書かれていない
- 同じ人が双方の署名者になっており、利益相反の観点からの手続が踏まれていない
これらは、署名欄を形式として扱い、当事者・署名者・権限の三つを別々に確かめていないことから生じます。署名の前に三つを確かめる習慣をつけるだけで、多くは予防できます。書面が整ったあとの効力や、約束を守らない場合の入口は覚書の法的拘束力と証拠力で整理しています。覚書や合意書の使い分けの全体像は覚書・合意書・変更契約書の使い分けに戻って確認できます。
よくあるご質問
担当者が署名した覚書は、会社を拘束しますか?
担当者に会社を代表して契約を結ぶ権限があるか、または代表者から委任を受けていたかによります。肩書の名称だけでは判断できません。代表取締役は会社の業務に関する一切の行為をする権限を持ちますが(会社法349条4項)、担当者や店長などは、支配人や特定事項の委任を受けた使用人などに当たる場合を除き、当然には権限があるとは言えません。権限を示す資料(委任状、権限規程など)を確認し、保管しておくのが実務の基本です。
署名欄には、法人名と代表者名のどちらを書けばよいですか?
両方を書きます。法人が当事者の場合、署名欄には、所在地、法人の名称、代表者の肩書、代表者の氏名を並べます。法人名だけでは、誰が署名したのか分からず、代表者名だけでは、どの法人のための署名か分かりません。個人事業主の場合は、屋号を添えてもよいですが、個人の氏名と住所は書きます。
代理人に署名してもらうときの注意点は何ですか?
署名欄に、本人の名称、代理人であること、代理人の氏名を並べ、本人の名で結ぶ形にします(民法99条1項)。あわせて、代理権の範囲と有効期間を書いた委任状を受け取り、覚書とともに保管します。代理権のない人が結んだ契約は、本人が追認しなければ本人に効力を生じません(民法113条1項)。
契約の相手が途中で変わる場合、覚書でどう対応しますか?
何を移すかによって、仕組みが変わります。契約の当事者としての地位全体を移すなら、相手方の承諾を得る契約上の地位の移転(民法539条の2)、債務だけを移すなら免責的債務引受(民法472条)、権利だけを移すなら債権の譲渡(民法466条)です。三者以上が署名する覚書で、移転の日、移転前に生じた債権債務の扱い、担保の扱いを書きます。
未成年者や、判断能力に不安のある人と覚書を結ぶときの注意点はありますか?
未成年者の法律行為は、原則として法定代理人の同意がなければ取り消すことができます(民法5条2項)。成年被後見人の法律行為は日常生活に関する行為を除き取り消すことができ(民法9条)、被保佐人や被補助人も、同意を要する行為について同意なくした行為は取り消すことができます(民法13条4項、17条4項)。義務を負う内容の覚書では、法定代理人などの同意を得た形で結ぶ配慮が必要です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、契約の内容や取引の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、実務でよく見られる書き方を整理した一般的な例で、特定の取引を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認できます。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 公正取引委員会