すでにある契約を変える・足す・終える方へ覚書・合意書を、
後から困らない書き方に
覚書、合意書、変更契約書、確認書。名前の違いで迷う方は多いのですが、名称によって効力が決まるわけではありません。大切なのは、「何を新しく決める書面か」「すでにある契約のどこを変える書面か」「すでにある事実を確かめる書面か」「契約を終える書面か」を切り分け、元の契約書との優先関係、日付、当事者、署名者の権限、そして後から「そんな約束はしていない」と言われないための書き方をそろえることです。このガイドでは、民法・民事訴訟法・会社法などの条文を一次確認したうえで、覚書と合意書の使い分け、基本契約との優先関係、変更・追加・期間の更新・合意解除の書き方、署名後の撤回と取消し、完全合意条項、日付と遡及、署名者の権限、署名・保管の運用、覚書の効力と強制執行の入口までを、書き方の例を添えてテーマごとに整理しています。契約書作成の実務の経験をもとに、すでにある契約の内容を変えたい方、相手から覚書への署名を求められた方が押さえておきたいことをまとめました。個別の紛争の見通しや税の取扱いは扱いません。
覚書と合意書の違いで迷っている方

名前でなく、何を決める書面かで選ぶ
覚書、合意書、変更契約書、確認書のどれで作るかによって、効力が変わるわけではありません。新しく決めるのか、すでにある契約を変えるのか、事実を確かめるのか、終わらせるのかという目的から選びます。
基本となる契約があるときは、覚書と契約書のどちらが優先するのかを書面の中に置いておきます。書いておかなければ、食い違ったときに読み方が分かれます。
契約の内容を変えたい・足したい方

変更箇所の特定と、変更しない部分の確認
契約書の内容を一部だけ変えるときは、元の契約の名称・日付・条番号を特定し、変えない部分は元のとおりだと確認する書き方にします。新旧対照表を付けると、変更の範囲が見えます。
原契約にない業務や条件を足すときは、範囲・対価・納期・原契約との関係を書きます。「その他一切の業務」といった包括的な追加は避けます。
期間の更新や契約の終了を整えたい方

期間のそろえ方と、合意解除で残す条項
契約期間をそろえたい、延長したい、自動更新の異議を出す期限を決めたいというときは、始期・終期・起算の考え方を決めます。期間満了後に取引が続いたときの扱いも確認します。
契約を途中で終えるときは、解除の日、精算、成果物やデータの扱い、解除後も残す条項を内容で書きます。条番号だけの指定は、原契約の改訂でずれます。
署名後の撤回や食い違いが気になる方

撤回できるものと、できないものの線引き
署名した覚書をなかったことにできるかは、撤回、解除、取消し、合意による解消の四つを区別して考えます。解除の意思表示は撤回できず、取消しは錯誤・詐欺・強迫などの要件が要ります。
完全合意条項や、書面による変更を求める条項があると、後から結ぶ覚書や口頭の約束との関係が問題になります。書き方の型を確認します。
当事者や署名者の書き方で迷う方

代表者か担当者か、三者以上か、相手が変わるか
署名欄の書き方は、誰が当事者で、誰が署名する権限を持つのかを示します。代表者の署名と担当者の署名、代理人の署名で、書き方と確認する資料が変わります。
三者以上で結ぶ覚書や、途中で相手が変わる場合は、契約上の地位の移転や債務の引受けの考え方を押さえます。
覚書の効力やトラブルが心配な方

拘束力、証拠力、強制執行の入口
覚書に法的な拘束力があるかは、題名でなく条項の書き方で決まります。「誠実に協議する」「努力する」といった書き方と、義務として書く書き方を使い分けます。
原契約と食い違った、覚書が見つからない、更新を忘れていたといったときの読み方の順序と、書面を残す手順も確認しておきます。
このガイドの解説ページ
よくあるご質問
覚書と合意書は何が違いますか?
法律上、名称によって効力が決まるわけではありません。どちらも、当事者が合意した内容を書面にしたものです。実務では、すでにある契約に付け加える・変えるときに「覚書」、新しく何かを取り決めるときに「合意書」と呼ぶ傾向がありますが、決まりはありません。大切なのは、書面が何を決めるものか、元の契約書との関係はどうかを、本文で明確にすることです。
契約書の内容を一部だけ変えるとき、覚書で足りますか?
足りることが多くあります。ただし、変更の対象となる元の契約書の名称・日付・条番号を特定し、「次のとおり改める」と書き、変更しない部分は元の契約のとおりだと確認しておきます。変更が広範囲に及ぶときは、覚書を重ねるより、変更契約書や契約の再締結を選ぶ方が見通しがよくなります。
基本契約と覚書の内容が食い違ったら、どちらが優先しますか?
優先関係は、書いておかなければ一律には決まりません。後から結んだ合意が前の合意を変える場面もあれば、そうでない場面もあります。覚書の中に「本覚書に定めのない事項は基本契約による」「食い違うときは本覚書が優先する」といった優先関係の条項を置いておくと、読み方が分かれにくくなります。
署名した覚書は、後から撤回できますか?
契約として成立した合意は、一方の都合では撤回できないのが原則です。解除の意思表示も撤回できません(民法540条2項)。ただし、錯誤、詐欺、強迫などの要件を満たす場合は取消しができ、また当事者の合意で改めて解消することもできます。どの方法に当たるかで要件と効果が変わるため、区別して考えます。
覚書に法的な拘束力はありますか?
当事者が権利義務を発生させる意思で合意した内容なら、覚書という名前でも契約として拘束力を持つのが通常です。一方で、「誠実に協議する」「努力する」といった書き方は、義務の内容が特定されず、強制しにくくなります。拘束力を持たせたい条項は、義務として具体的に書き、意向の確認にとどめる条項とは書き分けます。
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運営事務所・ご相談のご案内監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月22日