合意解除の覚書の書き方:解除の日・精算・清算条項・解除後に残す条項

相手と話がついて契約を途中で終わらせるときの書面が、合意解除の覚書です。解除権の行使と違い、効果は合意の中身で決まります。解除の日、精算、清算条項の範囲、解除後も残す条項を、どう書けば後から食い違いが残らないかを整理します。

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「債権債務は一切存在しない」と書いたために、解除後に生じた秘密保持違反への請求まで消えたと主張される、ということが起こります。

このページの要点

  • 合意解除は相手の同意が必要で、特別の方式はない(民法522条2項)。効果は合意の内容で決まるので、精算や存続条項を書く。
  • 解除の日を日付で書く。覚書の締結日と解除日が違うなら両方を明記し、解除日までの義務を書く。
  • 清算条項は、時点と範囲を限定する。残す義務や将来の債権を打ち消さないよう、除外を書く(民法519条の免除との関係)。
  • 解除後も残す条項は、条番号だけでなく内容と存続期間を書く。原契約の改訂による条番号のずれを防ぐ。

結論:合意解除は「契約で特別の方式がなく、効果は合意の中身で決まる」終わらせ方。だから中身を書く

契約を途中で終わらせたいとき、相手と話がついたのであれば、合意解除の書面を作るのが通常です。合意解除とは、当事者の合意によって、すでに成立している契約を終わらせることをいいます。一方の当事者が法律や契約の定めに基づいて単独で契約を終わらせる解除や解約とは、仕組みが異なります。

合意解除の書面で大切なのは、「契約を解除する」と書くだけでは足りない、という点です。契約を終わらせる合意に、特別の方式は必要ありません(民法522条2項。契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しません)。その反面、法定の解除に付随して民法が用意している効果の規定が、そのまま当てはまるとは限りません。いつ終わるのか、すでに支払った対価や預かった物をどうするのか、終わった後も残る義務は何か、お互いに言い分はもうないと確認するのか。これらを、合意の中身として書いておく必要があります。

  • 合意解除は、相手の同意が必要な終わらせ方。一方の都合では成立しないため、同意が得られなければ、契約の定めによる解約や法定の解除を検討することになる。
  • 解除の日を決める。日付を書かないと、解除前の履行と解除後の履行の線が引けない。
  • 精算(未払いの対価、前払いの対価、預かり物、成果物、データ)は、金額や処理の方法を具体的に書く。
  • 解除後も残す条項(秘密保持など)は、条番号だけでなく内容を書く。元の契約が改訂されると、条番号がずれるため。
  • 清算条項(お互いに債権債務がないことの確認)は、範囲を限定する。解除後も残す義務や、覚書で新たに定めた義務は含めない。

このページは、合意解除と他の終わらせ方との違い、覚書に入れる項目、解除の日、精算と清算条項、解除後も残す条項、場面ごとの注意の順に説明します。契約の期間を延ばしたり更新したりする書面は期間の更新と延長の覚書のページ、署名した覚書をやめたいときの考え方は撤回・取消し・合意による解消の整理のページで扱います。

合意解除と、解除権の行使・契約の定めによる解約は別物

契約が終わるきっかけには、いくつかの種類があります。まず、期間が満了して終わる場合があります。次に、契約の中に「いつでも○か月前の通知で解約できる」といった中途解約の定めがあれば、その定めに従って終わります。さらに、相手が債務を履行しないなど、法律の定める事由がある場合に、解除権を行使して終わらせることもできます。そして、当事者が話し合って、契約を終わらせることに合意する、という道があります。これが合意解除です。

解除権の行使には、民法に手順の定めがあります。540条1項は、契約または法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は相手方に対する意思表示によってする、と定めます。同条2項は、この意思表示は撤回することができない、と定めます。債務不履行による解除には、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときに解除できる催告による解除(541条)と、履行が不能である場合などに催告をせずに直ちに解除できる催告によらない解除(542条)があります。解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、その期間内に解除の通知を受けないと解除権は消滅します(547条)。

解除権を行使した場合の効果は、545条が定めます。各当事者は、相手方を原状に復させる義務を負い(同条1項)、金銭を返還するときは受領の時から利息を付さなければならず(同条2項)、金銭以外の物を返還するときは受領の時以後に生じた果実も返還しなければなりません(同条3項)。解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げません(同条4項)。

ところが、合意解除は、解除権の行使ではなく、契約を終わらせる新しい合意です。一般に、合意解除の効果は、当事者が合意で定めた内容によって決まるものと整理されます。そのため、545条が定めるような原状回復の範囲や、損害賠償を妨げないという扱いが、当然に当てはまるとは限りません。原状回復をどこまでするのか、すでに生じた損害の賠償を請求するのか、しないのかは、合意解除の書面に書いておく必要があります。書いていなければ、解除後に精算の食い違いが生じます。

契約の終わらせ方の比較

終わらせ方誰の意思で決まるか方式効果の決まり方
期間満了契約の定め(期間と更新の有無)による特別の方式はない契約の定めによる。満了後に取引が続いたときの扱いは別に問題になる
契約の定めによる解約解約権を持つ当事者の一方の意思表示による契約の定めによる(通知の方法・期限など)契約の定めによる。通知の期限が定められていることが多い
解除権の行使解除権を持つ当事者の一方の意思表示による(民法540条1項)相手方に対する意思表示。撤回できない(同条2項)民法545条などが定める(原状回復、損害賠償の請求を妨げない等)
合意解除当事者双方の合意による特別の方式はない(民法522条2項)合意の内容による。書かなかった事項は、後で争いになりやすい

準委任(法律行為でない事務の委託。民法656条)の関係では、さらに別の定めがあります。651条1項は、委任は各当事者がいつでもその解除をすることができる、と定めます。ただし、相手方に不利な時期に解除したときなどは、やむを得ない事由がある場合を除き、相手方の損害を賠償しなければなりません(同条2項)。業務委託契約の性質によっては、合意解除によらなくても、単独で契約を終わらせることができる場面があります。それでも合意解除の書面を作る意味は、終わった後の精算や、解除後も残す義務を、お互いの納得の上で確定できる点にあります。

合意解除の覚書に入れる項目と、全体の流れ

合意解除の覚書は、短い書面でも、入れるべき項目がいくつかあります。まず、対象となる契約の特定です。名称、締結日、当事者に加え、複数の書面(基本契約、個別契約、覚書)で構成されている場合は、どの書面を解除の対象とするのか、すべてを終わらせるのか、一部だけを終わらせるのかを書きます。

合意解除の覚書の組み立て

1. 対象の特定解除する契約を、名称・日付・当事者で特定する。複数の書面があるときは一覧にする。
2. 解除の合意と日合意によって解除すること、解除の日(効力が生じる日)を書く。
3. 精算解除の日までの対価、前払い金、預かり物、成果物、データの扱いを書く。
4. 残す条項解除後も効力を残す義務を、内容を書いて指定する。
5. 清算条項範囲を限定して、お互いに他に債権債務がないことを確認する。

図は一般的な順序の例です。契約の性質により、項目は増減します。

次に、解除する旨の合意と解除の日です。「令和○年○月○日をもって、甲乙は、原契約を合意により解除する」のように、日付を明記します。解除の理由を書くかどうかは、書面の使い道によって判断します。理由を書くと、後で争いが生じたときの手がかりになる一方、相手にとって不利益な事実が書かれる場合は、合意に至りにくくなります。合意解除の覚書は、終わらせることに合意した事実と、終わった後の取扱いを定める書面で、解除の原因を認定する書面ではない、と割り切るのが通常です。

条文例合意解除の覚書(骨格の例)

  1. 甲及び乙は、令和○年○月○日付で締結した○○契約(以下「原契約」という。)を、令和○年○月○日(以下「解除日」という。)をもって、合意により解除する。
  2. 甲及び乙は、解除日までに原契約に基づいて生じた対価の支払、預かり物の返還、成果物その他の引渡しについて、別紙記載のとおり精算する。
  3. 原契約の次の条項(内容を括弧内に記載する。)は、解除日以後も、なおその効力を有する。
  4. 甲及び乙は、本覚書に定めるもののほか、原契約に関し、相互に債権債務のないことを確認する。ただし、前項に定める義務及び本覚書に基づく義務は、この限りでない。

条文例の項は、一般的な書き方の例です。第3項の括弧内には、存続させる義務の内容を具体的に書きます。

解除の日と効力:将来に向かって終わるのか、さかのぼって解消するのか

合意解除では、「いつ終わるか」をはっきり書くことが、精算の出発点になります。解除の日より前に生じた権利義務は、解除の日まで有効に存在していたものとして精算します。解除の日以後の履行は、原則として不要になります。この線引きは、解除の日が書かれていなければ引けません。

一般に、継続的な取引(業務委託、販売店、保守、ライセンスなど)の合意解除は、解除の日以後の将来に向かって契約を終わらせる形で行います。これに対し、契約を最初からなかったものとする形で解消することも、当事者の合意があれば可能ですが、その場合は、すでに履行された部分の返還が問題になり、精算が複雑になります。「なかったものとする」と書きながら、実際には解除日までの対価を支払ったままにする、といった中途半端な書き方は、あとで食い違いの原因になります。

解除の日は、覚書の締結日と同じ日でなくても構いません。たとえば、締結日から1か月後の月末を解除日とし、その間に引継ぎや精算を行うことができます。この場合、締結日から解除日までの間、原契約の義務がどこまで続くのかを書いておきます。締結日と効力発生日が異なる場合の日付の書き方は、日付と遡及のページで扱います。

書き方の例(一般的な例) 解除の日と効力の書き方

解除の日

よくある書き方甲及び乙は、原契約を合意解除する。
整えた書き方甲及び乙は、原契約を、令和○年○月○日をもって合意により解除する。

理由日付がないと、解除前と解除後の履行を分けられない。覚書の締結日と解除日が違うなら、両方を明記する。

解除日までの義務

よくある書き方解除日まで、原契約のとおりとする。
整えた書き方解除日までの間、原契約の定めに従って履行するものとし、解除日までに生じた対価は、別紙記載のとおり精算する。

理由「原契約のとおり」だけでは、引継ぎ作業や、解除日直前の発注の扱いが不明確なまま残る。

精算の書き方:何を、いつまでに、どの方法で

合意解除の覚書で、争いになりやすいのが精算です。精算の対象は、契約の性質によって異なりますが、一般には次のものがあります。

精算で書き出しておきたいもの

  • 解除日までに生じた対価(未払いの分)と、その支払期限、支払方法、振込手数料の負担。
  • 前払いで受け取っている対価の、未履行部分の返還の有無と、日割りの計算方法。
  • 預かっている物、資料、金型や素材などの返還の方法と期限。
  • 成果物(制作物、データ、書類)の引渡しの有無、未完成の成果物の扱い、権利の帰属。
  • アカウントやシステムの権限、利用していたデータの移行・消去・返還の方法と期限。
  • 第三者への発注や費用の立替えなど、すでに発生している費用の負担。
  • 解除日以後に届く請求や、解除日前の取引に基づく請求の窓口。

これらは、金額や数量が決まらないまま「別途協議する」と書いて先送りにしやすい項目です。しかし、「別途協議」と書いただけでは、協議が整わなかったときの扱いが残ります。協議の期限を設ける、あるいは協議が整わないときの基準(たとえば日割りの計算式)をあらかじめ書いておくと、争いが長引くのを避けられます。

清算条項の範囲:「何もない」の意味を限定する

清算条項とは、「本覚書に定めるもののほか、お互いに債権債務がないことを確認する」という趣旨の条項です。合意解除の覚書の最後に置かれることが多く、後からの請求を封じる働きを期待されます。民法519条は、債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は消滅する、と定めています。清算条項は、実質的に、お互いに残りの債権を放棄する意味を持ち得ます。そのため、何を放棄するのかの範囲が、とても大切です。

範囲の書き方には、三つの観点があります。第一に、覚書で定めた債務と、解除後も残す義務は、清算の対象から外します。外さないと、残す義務まで消えたように読まれます。第二に、「一切の」という広い言い方は、当事者が想定していなかった請求まで含むかのように読めるため、原契約に関して生じたものに限る、あるいは解除日までに生じたものに限る、といった限定を付けます。第三に、まだ発生していない将来の債権、たとえば解除後に秘密保持義務に違反した場合の損害賠償は、清算の対象にならないことを、はっきり書きます。

書き方の例(一般的な例) 清算条項の書き方

清算の範囲

よくある書き方甲及び乙は、本件に関し、何らの債権債務も存在しないことを確認する。
整えた書き方甲及び乙は、原契約に関し、解除日までに生じた債権債務について、本覚書に定めるものを除き、相互に債権債務のないことを確認する。

理由「何らの」「本件に関し」という広い書き方は、残す義務や将来の債権まで消えたと読まれるおそれがある。時点と範囲を限定する。

残す義務との関係

よくある書き方(残す義務への言及なし)
整えた書き方前項の確認は、第○項に定める解除日以後も効力を有する義務には及ばない。

理由清算条項と残す条項が、互いに打ち消し合わないことを書く。

なお、すでに当事者の間に争いがあり、その争いをやめることを約する場合は、民法695条が定める和解に当たり得ます。紛争の解決後に結ぶ書面は、争いの内容や解決金の取扱いなど、別の問題を含みます。このガイドは、争いがない状態の合意解除を対象として説明しています。

解除後も残す条項:条番号ではなく、内容で書く

契約を終わらせても、一部の義務は終了後も続けたい場合が多くあります。秘密保持、個人情報の取扱い、知的財産権の帰属、損害賠償、競業や勧誘の制限、管轄の合意などです。これらを解除後も残すことは、通常、契約書の中の「存続条項」や、合意解除の覚書で定めます。

覚書でよく見られる書き方は、「原契約第7条、第8条、第9条は、解除日以後も引き続き遵守する」のように、条番号だけで指定する方法です。この書き方には二つの問題があります。一つは、原契約が後で改訂され、条番号が動いたときに、指定が別の条項を指してしまう点です。もう一つは、読み手が、原契約の条文を手元で開かなければ、何が残るのか分からない点です。覚書の署名者が、原契約の条文を持っていない、あるいは古い版を持っていることもあります。

参照の方法には三つの選択肢があります。一つ目は、条番号に見出しと内容の要旨を添える方法です。二つ目は、残す義務の内容を覚書の中に直接書き写す方法です。三つ目は、原契約の中に存続条項があるなら、「原契約が契約の終了後も効力を有すると定める条項」のように、原契約の定めを引く方法です。どれを選ぶ場合でも、残す条項の存続期間を書くかどうかも決めます。たとえば、秘密保持を解除後○年間とするのか、期間を限定せず続けるのか、で義務の重さが変わります。

条文例解除後も残す条項(内容を添えて書く例)

  1. 次の条項は、解除日以後も、なお効力を有する。(1) 原契約第○条(秘密保持) 相手方の秘密情報を、第三者に開示せず、目的外に使用しないこと。存続期間は、解除日から○年間とする。(2) 原契約第○条(個人情報の取扱い) 原契約に基づいて取得した個人情報を、法令及び原契約の定めに従って管理し、不要となったときは消去すること。(3) 原契約第○条(知的財産権) 解除日までに生じた成果物の権利の帰属は、従前のとおりとすること。
  2. 原契約の条番号が改訂その他の事由により変更されたときは、前項は、変更後の条番号の同内容の条項を指すものとする。

括弧内の内容は、一般的な書き方の例です。残す義務の内容と期間は、契約の実態に合わせて決めます。

書き方の例(一般的な例) 存続条項の参照の仕方

残す条項の指定

よくある書き方原契約第7条から第11条は、解除日以後も引き続き遵守する。
整えた書き方原契約の秘密保持の定め(原契約第8条)、個人情報の取扱いの定め(同第10条)及び知的財産権の帰属の定め(同第11条)は、その内容のまま、解除日以後も引き続き遵守する。

理由条番号だけでは、何が残るのか読み手に分からず、原契約の改訂で指定がずれる。見出しや内容を添える。

損害賠償

よくある書き方甲又は乙は、本覚書に違反したときは、相手方に生じた損害の全てを賠償する。
整えた書き方甲又は乙は、本覚書に違反して相手方に損害を与えたときは、相手方に対し、その違反により通常生ずべき損害を賠償する。

理由解除後の関係では、包括的な賠償の定めが重くなりやすい。範囲を限定し、原契約の責任の定めとの関係も確認する。

場面別の注意:条件付きの合意解除、一部だけの解除、相手が応じないとき

合意解除の覚書は、いつでも一つの形というわけではありません。よくある場面ごとに、気をつけることを整理します。

精算が終わってから解除の効力を生じさせたいとき

未払いの対価の支払いが済むまでは、契約を終わらせたくない、という場合があります。このときは、解除の日を固定するのではなく、「精算金の支払いが完了した日をもって解除の効力が生じる」と書く方法があります。ただし、条件が成就しないまま時間が過ぎると、契約がいつまでも残る状態になりますから、期限を併せて書きます。たとえば、「令和○年○月○日までに精算金の支払いが完了しないときは、本覚書による解除の合意は効力を失う」といった形です。

基本となる契約は残し、個別の契約だけ終わらせたいとき

基本契約と個別契約の二層構造では、個別契約だけを合意解除して、基本契約は続けることがあります。この場合は、解除する個別契約を特定し、基本契約の効力に影響しないことを書き、個別契約に関する精算をどう扱うかを書きます。基本契約が個別契約の条項を前提としている場合は、基本契約側の解釈に影響が出ないかも確認します。二層構造での優先関係の書き方は基本契約と覚書の優先関係のページで扱います。

相手が合意解除に応じないとき

合意解除は、相手の同意がなければ成立しません。相手が応じないときは、契約の定めによる中途解約が使えるか、法定の解除事由があるかを検討します。この判断には、契約書の中途解約条項、債務不履行の有無、解除の手順(催告の要否、通知の方法)の確認が必要で、個別の事案ごとに結論が分かれます。単独で解除の意思表示をした後は、撤回できません(民法540条2項)から、手順を誤らないようにします。

業務委託の関係での予告

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)16条は、特定業務委託事業者が、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む)をしようとする場合は、特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、少なくとも30日前までに予告をしなければならない、と定めています。ただし、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合など、厚生労働省令で定める場合は、この限りではありません。当事者が合意して契約を終わらせる場合に、この予告の規定がどのように働くかは、契約の内容や解消の経緯によって異なります。

当事者が三者以上のとき

三者以上の関係では、合意解除の当事者を誰にするかが問題になります。契約の当事者全員の合意が必要な場合、一部の当事者だけの合意では足りません。当事者の特定と、署名する人の権限は当事者・署名者・権限のページで扱います。

確認の問いと理由署名前の確認の問い(合意解除の覚書)

  1. 解除の対象となる契約が、名称・日付で特定されているか。

    複数の書面がある場合、一部だけが解除されたと読まれる余地を残さないため。

  2. 解除の日が書かれ、解除日までの義務と解除日以後の義務が区別されているか。

    線引きがないと、直前の発注や引継ぎ作業の扱いが争いになる。

  3. 精算の対象と、期限、金額の計算方法、支払方法が書かれているか。

    「別途協議」は協議の期限と、整わないときの基準を伴わなければ、争いの先送りになる。

  4. 残す条項が、条番号だけでなく内容で書かれているか。

    原契約の改訂による条番号のずれと、読み手の理解の違いを防ぐため。

  5. 清算条項の範囲が限定され、残す義務や将来の債権を打ち消していないか。

    広い清算条項は、免除(民法519条)の意味を持ち得るため。

  6. 署名者が、その契約を解除する権限を持っているか。

    合意解除の効力が、署名者の権限の有無で左右されないようにするため。

起きがちなこと:終わらせた後に、終わっていないことが見つかる

場面別の起きがちなこと

  • 解除の日が書かれておらず、解除前に頼んだ作業の対価を払うのか、解除後の分は払わなくてよいのかで、お互いの理解が分かれる。
  • 「別途協議する」と書いたまま、協議が始まらず、未精算の対価や預かり物が長く残る。
  • 「一切の債権債務がないことを確認する」と書いたため、解除後に生じた秘密保持違反への請求ができないと主張される。
  • 残す条項を条番号だけで指定すると、原契約が改訂されて条番号が動いたときに、別の条項が残る形になる。
  • 契約を終えたはずなのに、自動更新の条項が生きていて、更新の通知が届く。解除の対象に付属の契約や覚書が含まれていなかった。
  • 成果物やデータの引渡しについて書かれておらず、解除後に、使用してよいのか、消去すべきなのかが分からない。
  • 覚書の締結日と解除日が異なるのに、日付の欄に一つの日付しかなく、いつ終わったのかが不明確になる。

よくあるご質問

合意解除と、一方的な解除は何が違いますか?

一方的な解除は、解除権を持つ当事者が相手方に対する意思表示によって行い、いったんすると撤回できません(民法540条)。効果は、原状回復や損害賠償の請求を妨げないことなど、民法の定めに沿います(545条)。合意解除は、当事者双方の合意で契約を終わらせるもので、方式の定めはなく、効果は合意の内容で決まります。そのため、精算や存続条項を覚書に書いておくことが必要です。

合意解除の覚書は、書面にしなくても有効ですか?

契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成などの方式は必要ありません(民法522条2項)。合意解除も契約の一つですから、口頭でも成立し得ます。ただし、解除の日、精算、残す義務といった中身が口頭だけでは確定せず、後に食い違いが生じやすいため、書面にしておくのが通常です。

「債権債務は存在しないことを確認する」と書いておけば、後から請求されませんか?

範囲の書き方によります。広く書くと、残すべき義務や将来の債権まで消えたように読まれるおそれがあり、逆に、書き方が曖昧だと、請求を封じる効果も確実ではありません。解除日までに生じた原契約上の債権債務に限る、覚書に定める義務と解除日以後も残す義務は含めない、というように、時点と範囲を限定して書くのが整った書き方です。

契約を終えた後も、秘密保持は続けられますか?

契約の中に存続条項があるか、合意解除の覚書で秘密保持を解除後も残すと定めていれば、その定めに従って続きます。覚書では、条番号だけでなく、残す義務の内容と存続期間を書いておくと、原契約の改訂による条番号のずれや、読み手の理解の違いを防げます。

相手が合意解除に応じてくれません。どうすればよいですか?

合意解除は相手の同意があって初めて成立するため、応じてもらえなければ成立しません。契約に中途解約の定めがあればそれに従い、債務不履行などの解除事由があるときは、法定の解除(民法541条、542条)の手順を確認します。解除の意思表示は、いったんすると撤回できません(540条2項)から、手順と要件は確認してから行います。

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