このページの要点
- 契約として成立した合意は、一方の都合では撤回できないのが原則。撤回が問題になるのは、相手の承諾前の申込みの段階(民法523条・525条)。
- 解除の意思表示は、撤回できない(民法540条2項)。通知を出す前に、解除の事由と手続を確認する。
- 取消しには、錯誤(民法95条)、詐欺・強迫(民法96条)などの理由が要る。履行や請求をすると追認とみなされることがある(民法125条)。
- 有力なのは、相手の同意を得た変更・合意解除の覚書。空欄に署名すると、後から書かれた内容も署名者の意思と主張されやすい。
結論:署名した覚書をやめる道は、撤回・解除・取消し・合意による解消の四つ。要件も効果も別物
署名や押印をした後で、内容に納得できなくなった、相手の説明と違っていた、事情が変わった、という場面があります。このとき、多くの人が「撤回したい」「なかったことにしたい」と考えます。しかし、民法の上では、「やめる」ための手段が複数あり、それぞれ要件と効果が違います。どれに当たるのかを区別せずに「撤回します」と伝えても、法律上の効果が生じるとは限りません。
整理すると、次の四つになります。一つ目は撤回です。これは、まだ契約として成立していない申込みなどの意思表示を、取り下げることです。二つ目は解除です。成立した契約を、契約または法律の定めに基づく権利の行使によって終わらせます。三つ目は取消しです。錯誤、詐欺、強迫などで意思表示に問題があったときに、その意思表示の効力を最初からなかったことにします。四つ目は合意による解消です。当事者が改めて合意して、契約を終わらせたり、変更したり、白紙に戻したりします。
- 契約として成立した合意は、一方の都合では撤回できないのが原則。撤回が使えるのは、主に相手の承諾を得る前の申込みの段階。
- 解除の意思表示は、いったんすると撤回できない(民法540条2項)。手順を確認してから行う。
- 取消しには、錯誤、詐欺、強迫などの法律上の理由が必要で、気が変わっただけでは使えない。取消しの意思表示は、履行を始めたり請求したりすると、追認したとみなされることがある。
- 有力なのは、改めての合意。合意解除の覚書か、変更の覚書で、元に戻す内容を書面にする。
- 白紙や空欄の書面に署名すると、後から記入された内容をめぐる争いになりやすい。署名前に空欄を埋めるか、斜線で消す。
このページは、四つの手段の区別、申込みの撤回、解除の撤回不可、取消しの要件、合意による解消、空欄式の書式の危険の順に説明します。具体的な事案ごとの結論や見通しは書きません。条文の構造として、どの手段がどの場面で使えるのかを整理することが目的です。解除の仕組みは合意解除の覚書の書き方のページ、覚書の効力の入口は覚書の効力と強制執行のページで扱います。
署名後にやめるための手段の比較
| 手段 | 何を対象にするか | 必要なもの | 効果 |
|---|---|---|---|
| 撤回 | 相手が承諾する前の申込み(意思表示) | 承諾の期間を定めた申込みは撤回できない。撤回権を留保していれば別(民法523条、525条) | 申込みの効力がなくなり、契約は成立しない |
| 解除 | 成立した契約 | 契約または法律に基づく解除権。解除は相手方に対する意思表示によってし、撤回できない(民法540条) | 契約が終わる。効果は民法545条などによる |
| 取消し | 瑕疵のある意思表示 | 錯誤(民法95条)、詐欺・強迫(民法96条)などの法律上の理由。相手方に対する意思表示でする(民法123条) | 行為は初めから無効であったものとみなされる(民法121条) |
| 合意による解消 | 成立した契約 | 当事者双方の合意 | 合意の内容による。解除や変更、白紙撤回など |
撤回が使えるのは「契約が成立する前」。承諾の期間と、返送期限の意味
民法522条1項は、契約は、申込みに対して相手方が承諾をしたときに成立する、と定めています。契約の成立には、書面の作成その他の方式は不要です(同条2項)。つまり、覚書の署名欄に署名して相手に渡す行為は、法的には「申込み」か「承諾」のどちらかにあたることが多く、相手が承諾をした時に、覚書という契約が成立します。
ここで撤回が問題になります。民法523条1項は、承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない、と定めます。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、撤回できます。申込者が、その期間内に承諾の通知を受けなかったときは、申込みは効力を失います(同条2項)。承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回できません。これも、撤回する権利を留保したときは別です(525条1項)。対話者に対してした申込みは、その対話が継続している間は、いつでも撤回できます(同条2項)。
覚書の実務に引き直すと、次のようになります。一方が署名した覚書を相手方に送り、署名して返送してほしいと伝えた場合、その送付は申込みに当たると考えられます。返送の期限を書いておけば、それは承諾の期間を定めた申込みで、期限内は撤回できず、期限までに署名した書面が返ってこなければ効力を失います。期限を書いていなければ、相当な期間は撤回できません。いずれの場合も、相手が署名して返送し、承諾が申込者に届いた時点で、契約は成立します。成立した後は、撤回という手段は使えず、解除、取消し、合意による解消のいずれかを考えることになります。
覚書の成立までの流れ(署名を交換する場合)
図は、署名を取り交わして成立させる一般的な場合の説明です。電子署名による場合などの運用は、別のガイドで扱います。
こうした仕組みを踏まえて、実務では、署名の順序と効力発生の条件を書面に書いておく方法があります。たとえば、「本覚書は、甲乙が署名した後、最後に署名した者の署名がされた日に効力を生ずる」「甲が署名した書面を送付した日から○日以内に乙が署名して返送しなかったときは、甲の申込みは効力を失う」といった書き方です。返送の期限が書かれていないと、署名済みの書面がいつまでも有効な申込みとして残り、期限の見通しが立ちません。
また、契約に「署名後○日間は、書面により契約を取りやめることができる」といった検討期間を定めることもできます。契約の内容は、法令の制限内で当事者が自由に決められるからです(民法521条2項)。ただし、これは当事者の合意で作る制度で、法律上当然に認められるものではありません。
なお、特定商取引法は、訪問販売などの一定の取引類型について、契約の申込みの撤回や契約の解除(いわゆるクーリング・オフ)を認めています(たとえば同法9条の訪問販売)。しかし、同法26条1項1号は、申込みをした者や購入者が営業のために、または営業として締結する契約に係る販売または役務の提供には、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売に関する規定を適用しない、と定めています。したがって、事業者どうしの営業のための覚書には、これらの撤回の規定は通常働きません。個別の取引に当てはめるときは、取引の内容によって異なります。
解除の意思表示は撤回できない:通知を出す前に確認すること
民法540条2項は、解除権の行使に当たる意思表示は、撤回することができない、と定めます。解除は、相手方に対する意思表示によってされ(同条1項)、意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生じます(民法97条1項)。したがって、解除の通知が相手方に到達して効力が生じた後で、やはり契約を続けたいと思っても、一方的に解除を取り下げることはできません。
解除の意思表示を取り下げる方法があるとすれば、それは、相手方の同意を得て、解除がなかったものとして契約を続ける、という新たな合意です。この合意を書面にするなら、解除の通知があったこと、通知の日付、解除がなかったものとして原契約を継続すること、その間に生じた事項の扱いを書きます。この書面は、実質的に新しい合意になりますから、署名者の権限や日付の書き方に注意します。
解除権の行使には、債務不履行を理由とする催告による解除(民法541条)と、催告によらない解除(542条)があります。催告による解除では、相当の期間を定めて履行を催告し、期間内に履行がないことが要件です。ただし、期間を経過した時の債務不履行が、その契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除できません。手順を誤ると、解除が無効とされて、かえって自分が契約違反の立場になりかねません。解除の通知を出す前に、契約書の解除条項、通知の方法、催告の要否を確認することが必要です。
確認の問いと理由解除の通知を出す前の確認の問い
契約書に、解除の事由と手続(催告の要否、通知の方法)の定めがあるか。
定めがあれば、まずその定めに従う。民法の定めと異なる合意も、原則として有効(民法91条)。
相手の債務不履行が、催告を要する場合か、不要な場合か。
催告が必要なのに催告せずに解除すると、解除が認められないおそれがある(民法541条、542条)。
解除したいのではなく、条件を変えたいだけではないか。
条件の変更なら、変更の覚書で足りる。解除の意思表示は撤回できず、取引関係に与える影響が大きい。
通知は、いつ相手に到達するか。
効力は到達の時に生じる(民法97条1項)。期限のある解除では、期限までの到達が必要。
取消しができる場合:錯誤・詐欺・強迫と、その要件
取消しは、意思表示に問題があった場合に、その効力を最初からなかったことにする手段です。気が変わったから、条件が思ったほどよくなかったからという理由では、取消しはできません。民法が定める取消しの原因は限られています。覚書や合意書で問題になりやすいのは、錯誤、詐欺、強迫です。
錯誤による取消し(民法95条)
民法95条1項は、意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる、と定めます。錯誤は二つの類型です。一つは、意思表示に対応する意思を欠く錯誤(たとえば、書き間違いで、考えていた金額と違う金額を書いてしまった場合)。もう一つは、表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤(いわゆる動機の錯誤)です。
動機の錯誤による取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限ります(同条2項)。つまり、署名した側が、ある前提を心の中で置いていても、それが相手に表示されていなければ、取消しは認められません。覚書の前文に「経緯」や「前提となる事情」を書く場合、その事情が基礎とされていることを書いたことになり得ます。前文に書く事実が、署名時点の認識と食い違っていないかを確認しておくことは、取消しの主張にも、取消しの主張を受ける側にも関わります。
錯誤が表意者の重大な過失によるものだったときは、取消しはできないのが原則です。ただし、相手方が表意者に錯誤があることを知り、または重大な過失によって知らなかったとき、あるいは相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときは、取り消せます(同条3項)。この取消しは、善意でかつ過失がない第三者には対抗できません(同条4項)。
詐欺・強迫による取消し(民法96条)
民法96条1項は、詐欺または強迫による意思表示は、取り消すことができる、と定めます。相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合は、相手方がその事実を知り、または知ることができたときに限り、取り消せます(同条2項)。詐欺による取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができません(同条3項)。
事業者が消費者を勧誘して契約を結んだ場合には、消費者契約法が、事実と異なることを告げた場合や、不利益な事実を告げなかった場合などに、消費者に取消権を認めています(同法4条)。この取消権は、追認をすることができる時から1年間行わないとき、また契約の締結の時から5年を経過したときに、消滅します(同法7条1項。一部の類型は期間が異なります)。ただし、この法律は、消費者と事業者との契約に適用されるもので、事業者どうしの覚書には適用されません。
取消しの原因と要件(民法)
| 原因 | 要件の要点 | 効果・制限 |
|---|---|---|
| 意思に対応する意思を欠く錯誤(95条1項1号) | 錯誤に基づく意思表示で、その錯誤が法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要 | 取り消すことができる。表意者に重大な過失があるときは原則として取り消せない(3項) |
| 基礎とした事情についての錯誤(95条1項2号) | 上に加え、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていた(2項) | 取り消すことができる。善意無過失の第三者には対抗できない(4項) |
| 詐欺(96条1項) | 詐欺による意思表示 | 取り消すことができる。第三者が詐欺をした場合は、相手方が知り、または知ることができたとき(2項) |
| 強迫(96条1項) | 強迫による意思表示 | 取り消すことができる |
取消しの方法・効果・期間:履行を始めると追認とみなされることがある
取消しをするには、取消しの対象となる行為の相手方が確定している場合は、相手方に対する意思表示によって行います(民法123条)。取り消すことができる者は、錯誤、詐欺、強迫の場合は、意思表示をした者またはその代理人もしくは承継人に限られます(同法120条2項)。
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされます(民法121条)。無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負います(同法121条の2第1項)。したがって、すでに代金を支払っていたり、物を渡していたりすると、取消しの後は、返還の精算が必要になります。
取消しには、時間の制限があります。取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないとき、また行為の時から20年を経過したときに、時効によって消滅します(同法126条)。さらに、取り消すことができる行為は、取消権者が追認したときは、以後、取り消せなくなります(同法122条)。追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、効力を生じません(同法124条1項)。
実務で見落とされやすいのは、法定追認です。民法125条は、追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について、全部または一部の履行、履行の請求、更改、担保の供与、権利の譲渡、強制執行のいずれかがあったときは、追認をしたものとみなす、と定めます。ただし、異議をとどめたときは、この限りではありません。つまり、取消しの原因があると考えていても、その後に代金を支払い続けたり、相手に履行を求めたりすると、取消しを放棄したと扱われるおそれがあります。取消しを考えるときは、取消しの意思表示をする前に、履行や請求を続けてよいのか、異議をとどめる方法はあるのかを、慎重に考える必要があります。
取消しを考えるときの確認の順序(一般的な整理)
図は、条文の構造を順に並べた一般的な整理で、特定の事案の結論を示すものではありません。
制限行為能力者(未成年者など)の法律行為の取消し、意思能力を欠く者の法律行為の無効(民法3条の2)、真意でない意思表示(心裡留保。93条)、通謀した虚偽の意思表示(94条)などは、別の仕組みです。当事者の能力と、署名者の権限の確認は当事者・署名者・権限のページで扱います。
合意で解く:撤回できないものを、新しい合意で元に戻す書き方
撤回も取消しもできない場面でも、相手が同意してくれるなら、新たな合意で元に戻すことができます。契約の内容は、法令の制限内で自由に決められ(民法521条2項)、方式も不要(522条2項)だからです。実務では、次のような書面が使われます。
合意で解く書面の種類
| 書面 | 目的 | 書くこと |
|---|---|---|
| 変更の覚書 | 一部の条件だけを元に戻す、または別の内容に改める | 変更箇所の特定、変更後の定め、変更しない部分は元のとおりであること。詳しくは契約書の変更を覚書で行うときの書き方 |
| 合意解除の覚書 | 契約を将来に向かって終わらせる | 解除の日、精算、存続させる義務、清算条項。詳しくは合意解除の覚書の書き方 |
| 白紙に戻す合意 | 契約を最初からなかったものとして扱う | すでに履行した部分の返還の範囲と方法、費用の負担、返還が済むまでの扱い |
条文例白紙に戻す合意の骨格(一般的な例)
- 甲及び乙は、令和○年○月○日付で締結した覚書(以下「原覚書」という。)を、合意により、締結の時にさかのぼって効力を生じなかったものとして取り扱う。
- 甲及び乙は、原覚書に基づいて授受した金銭その他の給付を、令和○年○月○日までに、次の方法により返還する。(1) 甲が乙に対し、金○円を、乙の指定する口座に振り込む。(2) 乙が甲に対し、預かっている資料を返還する。
- 甲及び乙は、本覚書に定めるもののほか、原覚書に関し、相互に債権債務のないことを確認する。ただし、前項に定める返還の義務は、この限りでない。
「さかのぼって効力を生じなかった」とする場合は、すでに履行した部分の返還が必要になります。返還の範囲、方法、期限を具体的に書かないと、白紙に戻したのかどうかが分からなくなります。
書き方で気をつけたいのは、「なかったことにする」という漠然とした表現を使わないことです。何を、いつの時点から、どの範囲でなかったことにするのか、すでに動いた金銭や物の扱いはどうするのか、を具体的に書きます。「なかったことにする」と書いても、すでに第三者に影響が及んでいる場合の扱いは、当事者の合意だけでは決められません。また、署名後に内容を調整したいだけなら、白紙に戻すより、変更の覚書で必要な部分だけを改める方が、混乱が少ない場合が多くあります。
白紙・空欄式の書面に署名するときの危険と、署名の運用
覚書の雛形には、日付、金額、期間、負担者などを空欄にした書式が多くあります。空欄式の書式自体に問題はありません。問題は、空欄が埋まらないまま署名や押印をし、後から別の人が記入する運用です。
民事訴訟法228条4項は、私文書は、本人またはその代理人の署名または押印があるときは、真正に成立したものと推定する、と定めています。署名のある書面は、本人の意思に基づいて作成された、と推定されやすいということです。空欄の状態で署名すると、後から書き込まれた内容も、署名者の意思に基づくものだと主張されやすくなります。署名時の認識と異なる内容が書き込まれたときは、署名者の側が、そのことを争わなければならない立場に立たされます。
空欄式の書式を使うときは、次のような運用が考えられます。署名の前に、すべての空欄を埋める。埋める内容がない欄は、斜線を引くか「なし」と書く。やむを得ず後日に補充する欄を残すなら、補充する内容の範囲、補充する人、補充の期限、補充後の写しを交付することを、書面に書く。補充した後は、署名者が内容を確認して、訂正印または確認の署名をする。これらを定めておくと、後で「そんな内容に合意していない」という争いを減らせます。
書き方の例(一般的な例) 空欄の扱い
空欄の残し方
理由空欄に署名すると、後から書かれた内容も署名者の意思によるものと主張されやすい。補充の権限の範囲を書面に残す。
署名の順序
理由期限がないと、署名済みの書面がいつまでも有効な申込みとして残り、撤回の可否が不透明になる(民法523条、525条)。
署名前の確認(撤回・取消しを後から考えなくて済むように)
- 書面の中で、対象となる契約・取引・金額・期間・負担者が特定されているか。空欄が残っていないか。
- 前文の経緯・前提の記載が、署名時点の認識と食い違っていないか。
- 説明を受けた重要な事項(料金、期間、責任)が、書面の条項として入っているか。口頭の説明だけに頼っていないか。
- 署名者が、その取引について権限を持っているか。代理で署名する場合は、代理権があることを示せるか。
- 署名の期限、効力の発生日、返送の期限が書かれているか。
- 検討期間や撤回の条件を定める場合は、その条件と手続が書面に書かれているか。
- 署名した書面の写しを、双方が保管しているか。
起きがちなこと:「やめたい」と言った言葉が、法的に何を指すのか分からない
場面別の起きがちなこと
- 署名した覚書を送った後、相手が署名して返す前に撤回したくなっても、返送の期限が書かれていれば、期限内は撤回できない。
- 「契約を取り消します」と伝えても、取消しの原因(錯誤、詐欺、強迫)が示されなければ、気が変わっただけと扱われ、取消しの要件を満たさない。
- 取消しの原因があると考えながら代金の支払いを続けると、追認したものとみなされる可能性が出る。
- 解除の通知を出した後で契約を続けたくなっても、解除の意思表示は撤回できず、相手の同意を得て改めて合意するほかなくなる。
- 空欄のまま署名・押印した書面に、後から金額や期間が書き込まれ、署名時の認識と異なる内容が記載される。
- 「署名後○日間は取りやめられる」と口頭で説明されても、書面に書かれていなければ、確認できない。
- 「なかったことにする」と合意しても、すでに支払った金銭や渡した物をどう返すかが書かれていなければ、返還をめぐって食い違いが生じる。
よくあるご質問
署名した覚書を、気が変わったので撤回できますか?
契約として成立した後は、一方の都合では撤回できないのが原則です。撤回が問題になるのは、相手が承諾する前の申込みの段階で、承諾の期間を定めた申込みは撤回できません(民法523条)。成立後は、解除、取消し、合意による解消を考えます。有力なのは、相手の同意を得て、変更または合意解除の覚書を結ぶことです。
解除の通知を出したあとに、やはり契約を続けたい場合はどうなりますか?
解除の意思表示は、撤回することができません(民法540条2項)。通知が到達して効力が生じた後は、一方的に取り下げられないため、相手方の同意を得て、解除がなかったものとして契約を続ける旨の合意をする方法になります。合意の内容を書面に残し、解除通知から合意までの間に生じた事項の扱いも書いておきます。
錯誤で取り消せるのは、どのような場合ですか?
意思表示に対応する意思を欠く錯誤、または法律行為の基礎とした事情についての認識が真実に反する錯誤があり、それが法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要であるときです(民法95条1項)。基礎とした事情についての錯誤は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていた場合に限られます(同条2項)。表意者に重大な過失があるときは、原則として取り消せません(同条3項)。
取消しを考えているとき、代金の支払いを続けてもよいですか?
注意が必要です。取り消すことができる行為について、追認をすることができる時以後に、全部または一部の履行や履行の請求などがあると、追認をしたものとみなされます。ただし、異議をとどめたときは、この限りではありません(民法125条)。取消しを考えているときは、履行や請求を続けることが追認と扱われないかを、確認してから進めます。
白紙の用紙や、空欄のある書式に署名しても大丈夫ですか?
おすすめできません。署名や押印のある私文書は、真正に成立したものと推定されます(民事訴訟法228条4項)。空欄に署名すると、後から書き込まれた内容も署名者の意思によるものとして主張されやすくなります。署名の前に空欄を埋めるか、埋める内容がない欄は斜線で消してください。後日補充する欄を残す場合は、補充の範囲、補充する人、期限を書面に書きます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、契約の内容や取引の経緯によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、実務でよく見られる書き方を整理した一般的な例で、特定の取引を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認できます。参考: e-Gov法令検索 / 法務省 / 公正取引委員会